沖縄県、辺野古埋め立てを拒否(2015/10/14)
沖縄県知事が辺野古埋め立ての許可を取り消した。深まる沖縄と日本政府の対立について各メディアは以下のように伝えている。
10月13日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は沖縄県翁長知事が、辺野古埋め立て許可を取り消す決定をしたことを報じている。そして翁長知事は中央政府との闘いを最後まで続けると宣言し、法廷での対決も辞さないと語ったことを報じている。翁長氏は1か月ほど前から、前知事が下した許可には法的な瑕疵があるとして、何らかの行動を起こす意向であったという。翁長氏は昨年末の選挙でアメリカ海軍の普天間基地を、辺野古に移設させないという公約を掲げて沖縄県知事に当選した人物である。...
全部読む
10月13日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は沖縄県翁長知事が、辺野古埋め立て許可を取り消す決定をしたことを報じている。そして翁長知事は中央政府との闘いを最後まで続けると宣言し、法廷での対決も辞さないと語ったことを報じている。翁長氏は1か月ほど前から、前知事が下した許可には法的な瑕疵があるとして、何らかの行動を起こす意向であったという。翁長氏は昨年末の選挙でアメリカ海軍の普天間基地を、辺野古に移設させないという公約を掲げて沖縄県知事に当選した人物である。
沖縄県には、近隣諸国間の高まる緊張関係への対処や災害救助目的、さらには日米の利益保護のために1万9000人以上の海軍兵士が配置されているという。
今回の拒否に関して菅官房長官は「大変遺憾であり、基地の移設計画は続行されるだろう」とコメントしている。
10月13日付
『フォックス・ニュース』は
『AP』の記事を引用し、今回の取り消しは翁長氏の前任者が2013年に許可した埋め立てであり、翁長氏の掲げた公約はこれとは反対のものであることを伝えている。
今回埋め立て許可が取り消される前の8月10日より1か月間、政府は沖縄県との妥協点を探るべく自発的に埋め立てを中止していたという。しかしながら、この1か月という期間も20年以上にわたる政治的問題を解決するには短すぎ、先月政府は地元住民や反対活動家らの抗議活動を押し切って工事を再開したものである。
中谷防衛大臣はこの件に関し、工事は一時的には中断を余儀なくされるかもしれないが、できるだけ早く再開する意向だと語ったという。また、あわせて調査も実施し、司法に対して今回の決定を覆す命令を求めるという。
沖縄県は現在日本にいるアメリカ人兵士5万人のうち約半数以上が駐在し、基地の占める面積は沖縄本土の5分の1にもおよぶという。にもかかわらず、経済活動は沖縄県全体の5%未満で基地内の従業員のうち沖縄県民の占める割合は1.4%にすぎないという。沖縄県によると基地の存在は沖縄の経済に何ら貢献していないという。沖縄県が発行したパンフレットによれば、アメリカ軍から返還され、その後再開発されたエリアでは大きな経済効果が上がっているという。
ただ、基地の移設反対の背後にあるのは経済的な問題だけではなく、メインは基地周辺の安全面だという。普天間基地周辺には学校や病院を含む居住地域が広がっているのだ。
今回の沖縄県と政府の対立についてアメリカ側は「我々にとって抜き差しならない問題であり、日米間の安全面を支える非常に重要な問題と考えている」とのコメントを発表している。
10月13日付
『ロイター通信』は今回の沖縄県と政府の対立が、政府によるいわゆる「いじめ」の様相を呈し、安倍氏の支持率を下げ、来年の選挙に不利に働くのではないかとの見方を示している。アメリカと日本は1996年に住宅密集地内の基地が非常に危険であるとの理由から、普天間基地を移設することにつき合意に達している。しかしながら、公害や騒音問題に対する懸念から移設先の決定など、計画は実質的には近年まで進んでいなかった。
10月13日付
『ヤフー・ニュース』は、人口密集地から住民の少ない基地への移設に対してなぜこれほどまでに反対意見が強いのか分析している。
沖縄は日本の総面積の1%にも満たないが、日本にあるアメリカ軍施設の実に75%が集中しているという。人口130万人に対し、2万5000人のアメリカ人兵士が駐在している。そしてここ数十年、アメリカ人兵士による犯罪が後を絶たず、中でも12歳の少女がアメリカ人兵士に強姦された事件が沖縄県民のアメリカ軍に対する怒りに火をつけたという。
そして、さらに根深い問題として沖縄県民が政府に第二次世界大戦時から裏切られ続けてきた点が挙げられるとしている。第二次世界大戦終結前、沖縄は日本で唯一の本土戦の場となり沖縄県民の25%が命を落としたという。日本兵により自殺を命ぜられ死亡した者も数多くいたといわれている。
琉球大学の我部教授は「沖縄は駆け引きの駒ではない。沖縄は日本の声なき声を代弁している」と語ったという。
長期にわたる確執をどのように乗り越えていくのか安倍氏の力量が問われるところである。
閉じる
TPPの勝者はヴェトナムとマレーシア(2015/10/09)
先日数年にわたるTPPが妥結した。各国悲喜こもごもであろうが、最終的にどの国に
有利な結果となったのか。各メディアは以下のように報じている。
10月7日付
『CBSニュース』では、アメリカ主導で行われてきたTPP交渉のメリットは
参加している12か国に平等に行き渡ってはいないと報じられている。
参加国の中で最もメリットを享受するのはヴェトナムであるという。同国では衣類や
靴の製造業が現在飛躍的に成長しており、アメリカをはじめとする参加国間の関税が
撤廃されれば、大きな利益を上げるだろうとされている。中には日本の自動車関連産
業やマレーシアの電子機器および半導体産業もTPP交渉のメリットを享受するとみる
専門家もいる。...
全部読む
10月7日付
『CBSニュース』では、アメリカ主導で行われてきたTPP交渉のメリットは
参加している12か国に平等に行き渡ってはいないと報じられている。
参加国の中で最もメリットを享受するのはヴェトナムであるという。同国では衣類や
靴の製造業が現在飛躍的に成長しており、アメリカをはじめとする参加国間の関税が
撤廃されれば、大きな利益を上げるだろうとされている。中には日本の自動車関連産
業やマレーシアの電子機器および半導体産業もTPP交渉のメリットを享受するとみる
専門家もいる。
IHSグローバル・インサイトのアジア太平洋地域チーフエコノミストであるラジブ・
ビスワス氏は「TPPはヴェトナムにとって大きなチャンスであり、とりわけアメリカ
へ衣料品を輸出する国々の中でも抜きん出ることができるかもしれない」と語ったと
いう。ヴェトナムの台頭はメキシコの衣料品や靴の製造業、さらにはカナダやアメリ
カの同産業を圧迫するものであるが、この3か国は農産業や機械産業、電子機器分野
で利益を享受するという。
このTPP協定によりヴェトナムへの海外資本の流入は加速するとみられているとい
う。サムスン電子などは永年中国に工場を構えてきたが、近年高騰する人件費を少し
でも抑えるため、ここ数年はヴェトナムに工場を建設中だという。ビスワス氏らによ
れば、ヴェトナムはTPP参加国の中で最もバランスの良い経済成長を遂げており、こ
れはひとえに一人当たりのGDP(国内総生産)が比較的低いためだという。アメリカ
のコンサルティング会社ユーラシア・グループの調査結果によると、ヴェトナムは
2025年にはTPP協定がなかった場合と比して25%成長し、360億ドル(約4.3兆円)規模
のものになり、輸出だけでみると28%の伸びになると予測されている。
海外資本のヴェトナムへの流入は他の国々の利益を侵食するだろうとの見方もある。
製造業の中でもとりわけ衣料品メーカーは「商品の材料もヴェトナムで調達しなけれ
ばならない」という不安から、競って生産の一部をヴェトナムに移行しているとい
う。ビズワス氏によると「糸や布といった製造の初期段階の拠点も次第にヴェトナム
に移りつつある。これは総生産高を押し上げるもので、大きな資本移動が起こってい
るといえる」という。
香港に拠点を構え、アメリカの名だたる衣料品メーカーと製造委託契約を結んでいる
会社の社長は
『CBSニュース』の取材に対して「TPPにより製造場所を移さなければな
らなくなるが、会社の純利益は現状維持か、ともするとマイナスになるかもしれな
い」と語ったという。「我が社としてもヴェトナムで製造したいのは山々だが、異国
の地で今までと同様の競争力を確保することは難しい。商品の納入先は関税低減のメ
リットを最大限要求してくるだろうから我々の利益は少ないだろう」。
マレーシアも今回のTPP協定により恩恵を受けるとみられている。産業大臣のムスタ
ファ・モハメド氏によると、マレーシアは生地や衣類ではもちろん、より高い付加価
値産業である半導体や集積回路では大きな利益が見込めるという。前出のユーラシ
ア・グループによると、マレーシアはエレクトロニクス産業の鍵を握っており、TPP
批准により同国の経済は2025年には現在より5.6%成長するとみられるという。
日本もTPPにより自動車関連産業の外国市場参入の間口を広げられており、2025年に
は現在より1億500万ドル(約126億円)のGDPの増額が見込めるという。
10月6日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』によると、ヴェトナムはTPPを大いに歓迎し
ており、すぐにでも批准されるだろうと伝えている。ヴェトナムの前国会議員である
グェン・ミン・トゥイ氏は「ヴェトナムの貿易相手国は中国に偏っており、TPPは中
国への依存を減らし多様な貿易相手を確保するという点で歓迎すべき」と語ったとい
う。ヴェトナム統計局によれば今年9月までのヴェトナムの貿易相手国は中国が1位
で、対中国貿易黒字は5000万ドル(約60億円)だという。
10月7日付
『バリュー・ウォーク』(アメリカ)は、クレディ・スイスの分析を引用
し、企業にとって流動的な資金調達ができないと工場移転も困難でありTPPの直接の
利益を享受することは難しいが、一定の波及効果は望めるとしている。例えば金融業
や消費、資産などには良い影響を及ぼすだろうとしている。ただ、ヴェトナムへの資
本流入により今回TPPに参加していないタイは資本の大量流出という大きな打撃を受
ける可能性があるとしている。
また、マレーシアに関しては2018年までは目に見える発展は望めないが長期的にはメ
リットをもたらすだろうとの専門家の分析を掲載している。
閉じる
その他の最新記事