イエメン、政府側と反政府勢力が停戦合意と和平交渉を開始(2015/12/16)
イエメンはここ数年、現政権側と前大統領を支持する反政府勢力による争いが繰り返
されており、国民は悲惨な生活を強いられている。しかしながらこの状況を打破すべ
く両陣営の停戦と和平交渉が国連主導で執り行われることになった。これまでの経
過、停戦の見通し、イエメンの実情について各メディアは以下のように伝えている。
12月14日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は、イエメンの国内紛争はフシ反乱軍(イ
エメン北部を拠点に活動するシーア派の武装組織)と現イエメン大統領ハーディー氏
との政権をめぐる争いが原因で起きており、国連が15日からスイスで両者の和平交渉
を仲介するのと同時に停戦実施が合意に至ったと伝えている。今回の停戦合意の期間
は15日から7日間の期間で、アフメド国連特使によれば、フシ反乱軍が今回の合意を
守るかどうかはわからないという。...
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12月14日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』は、イエメンの国内紛争はフシ反乱軍(イ
エメン北部を拠点に活動するシーア派の武装組織)と現イエメン大統領ハーディー氏
との政権をめぐる争いが原因で起きており、国連が15日からスイスで両者の和平交渉
を仲介するのと同時に停戦実施が合意に至ったと伝えている。今回の停戦合意の期間
は15日から7日間の期間で、アフメド国連特使によれば、フシ反乱軍が今回の合意を
守るかどうかはわからないという。また、対する現政権側を支持する連合国軍も停戦
合意には従うつもりではあるものの、「相手方が停戦合意を破った際には反撃する権
利を留保する」という条件付きの合意であるとしている。
イエメンの内戦の勃発は2014年に遡るという。前出のフシ族が首都サナを制圧し、
ハーディー大統領らはフシ族の攻撃を逃れてサウジアラビアに助けを求めたのだ。続
いてフシ族は湾岸都市アデンも制圧したという。その後ハーディー大統領を支持する
サウジアラビアが周辺諸国と連合軍を組織し、アデンを奪還しているが、サナは未だ
にフシ族に占領されているという。フシ族はイランの支援を受けており、連合軍はイ
ランの影響を恐れてハーディー大統領を支援しているとも言われている。
国連の中東地域高官であるファンデクロー氏によると、サウジアラビア率いる連合軍
が空爆を開始した今年3月から先月までで5700人が内戦により命を落としているとい
う。同氏はイエメンを「生活に必要な設備を欠き、国外脱出を余儀なくされている国
である」とし、「2700万人いる国民のうち2100万人は人道的支援を必要としており、
約3万人の子どもと妊婦には栄養失調を回避するための予防措置が求められている」
と語ったという。
12月15日付
『BBC』は、今回の停戦合意の発効は月曜に予定されていたが、サウジア
ラビアの公共放送機関がこれを火曜日に延期したことを報じている。その際延期の理
由は明らかにされなかったという。
同記事によれば、今回の停戦合意の直前、サウジアラビアの軍司令官やUAEの士官を
はじめイエメンやスーダンの多数の兵士が、フシ族によるイエメン南部のタイズでの
ミサイル攻撃により命を落としたことを伝えている。これはおそらく今年9月にイエ
メン東部のマリーブ内の連合軍基地がフシ族によるミサイル攻撃を受け、45人のUAE
の兵士が死亡したのを上回る被害であるという。
また、同記事は3月に連合軍が行ったフシ族への攻撃によりマリブの奪還に成功した
ものの、タイズは未だフシ族に占領されており、連合軍とイエメン政府軍はタイズ奪
還のため、フシ族と数か月にわたって戦火を交えていることを伝えている。
12月15日付
『NYSEポスト』は、イエメンの内戦のフシ族と現政権の対立、およびフシ
族をイランが支持、現政権を連合軍が支持していることを報じたうえで、内戦がこう
着状態にあり、どちらにも勝ち目がないとの見方を示している。
今回の停戦合意の前にも今年6月に和平交渉の機会が設けられていたという。ただ、
この交渉では両者がお互いの譲歩を求めるあまり合意に達することができなかったと
いう。
同記事は国連児童基金(ユニセフ)の発表を引用し、イエメンの内戦による死者のう
ち約半数が一般市民であり、その中でも637人は子どもであったことを伝えている。
また、同記事は「BBC」の記事を引用し、連合軍による空爆が、イエメンの子どもが通う
学校を標的にしていたとアムネスティ・インターナショナルが発表したことも付け加
えている。国連の使節は「和平交渉開始と同時に、すぐにでも停戦状態になることを
望んでいるが、停戦合意が確実で、長期にわたり実効性のあるものにするためには議
論を重ねる必要があるだろう」と語っているという。
また、同記事は前回の和平交渉に伴う停戦が約定期間を満了できなかったことにも言
及している。これは今年7月、連合軍がアデン内の味方を誤って攻撃し、停戦合意が
破られたとみられているものである。このことにつき連合軍は「初めから停戦には合
意していなかった」と言い逃れをしたという。
今までの経過を見てみると、停戦合意が守られるか、かなり疑問が残る。しかしなが
ら、内戦の最大の犠牲者である一般市民のためにも今回の和平交渉の成功と停戦合意
の順守を願いたい。
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ニューヨークが外食産業に食塩の含有量表示を義務付け(2015/12/02)
12月1日からニューヨーク市内では、外食チェーンのレストランで一定量以上の塩分
を含むメニューに、塩ふりマークの表示が義務付けられている。ニューヨーカーの健
康に配慮してのことだろうが、これにはもちろん反対の意見も根強い。各メディアは
以下のように報じている。
11月30日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』はニューヨーク市が、アメリカ国内で初め
て外食チェーンレストランでのメニューで、一定量以上の塩分を含むものには塩ふり
(塩入れ)のデザインを模しマたークを付けることを義務付けていると報じている。
そしてこれによりニューヨーク市民の心臓病や心臓発作の減少が見込まれると報じて
いる。今回の表示義務は今年9月にニューヨークの衛生局で全会一致で可決されたも
のであり、アメリカ国内で15店以上のチェーン店を展開するレストランが対象となっ
ている。...
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11月30日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』はニューヨーク市が、アメリカ国内で初め
て外食チェーンレストランでのメニューで、一定量以上の塩分を含むものには塩ふり
(塩入れ)のデザインを模しマたークを付けることを義務付けていると報じている。
そしてこれによりニューヨーク市民の心臓病や心臓発作の減少が見込まれると報じて
いる。今回の表示義務は今年9月にニューヨークの衛生局で全会一致で可決されたも
のであり、アメリカ国内で15店以上のチェーン店を展開するレストランが対象となっ
ている。ただ、これには移動式映画館やスポーツ観戦施設内のスタンドなど一部の施
設には例外措置が設けられているという。この措置はニューヨーク市長であるデブラ
シオ氏の強い後押しにより実現したものであるが、この動きは前任者のブルームバー
グ元市長から引き継がれたものであるという。ブルームバーグ氏は公的スペースでの
喫煙禁止やファストフード会社に対してカロリー表示を義務付けるなど、数々の施策
を行ってきた。
同記事によれば、一日に推奨される塩分の摂取量は2300ミリグラムで、およそティー
スプーン1杯分だという。今回のような表示を義務付けることにより、チポトレ(ア
メリカのメキシカン料理のチェーン店)やサブウェイといったような、一見健康的に
見える店の常連客もメニューに含まれる塩分量に注意を払うようになるだろうとして
いる。両社のメニューは豆や野菜類がたくさん使われている点を売りにしているが、
同記事は両社のブリトーやサンドイッチ、さらにはTGIフライデー社などの特定のメ
ニューを例に挙げてそれらに含まれる塩分が一日の摂取限度量を超えていることを指
摘している。
さらに同記事は循環器系の疾患による死亡者数が2013年には1万7000人と、最近
ニューヨーク市民の死因として目立ってきていることに言及している。そして塩分の
摂取過多は高血圧症や心臓病、心臓発作の大きな要因となりうることにも触れてい
る。
2010年の保険局の調査によると、ニューヨーク市民は平均3200ミリグラム以上の塩分
を摂取しているとのデータがあるという。塩分摂取過多の傾向は特に黒人とヒスパ
ニック系に強くみられるという。ニューヨーク市民が塩分の摂取量を意識することに
より、他の面でも健康を意識する変化が期待されているという。ニューヨーク大学ラ
ンゴーン医療センターで共同理事を務めるワインストラウブ氏は「塩分摂取量を控え
るだけでは健康的にはなれない。今回の表示の義務付けにより、ひょっとしたら
ニューヨーク市民は食事量にも気を遣うようになり、地下鉄を目的地の一駅手前で降
りて歩いたり、エレベーターを使う代わりに階段を一段とびで上がるようになるかも
しれない。そうすれば減量にもつながるだろう」とコメントしたという。
12月1日付
『NYSEポスト』は今回の表示義務を報じた上で、ニューヨーク市の衛生局
長であるバセット氏が今回の表示義務付けが発表された9月の記者会見で発表したコ
メントを掲載している。「より多くの人々に塩分摂取過多が健康に及ぼす影響を知っ
てほしいし、他の州でも同様の措置が講じられることを願っている」。
他方、レストラン協会会長であるフレイシュット氏は今回の措置がレストラン業界に
悪影響を及ぼすだろうとする。「一連のカロリーや塩分の表示を義務付ける法律は、
外食産業のニューヨークでの活動をどんどん難しいものにしている」。また、レスト
ラン関係者らは国レベルでの塩分摂取のガイドラインが存在する以上、さらなる表示
の義務付けは不要であるとの主張もなされているという。
同記事は、アメリカ人は平均的に一日当たりティースプーン一杯半の塩分を摂取して
おり、その多くはレストランや工場ですでに食品に添加されており、消費者が自主的
に摂取しているものではないという。また、一般的にレストランの料理人は家庭料理
より多くの塩分を料理に使う傾向がみられるという。また、前述のアメリカ人の一日
当たりの塩分摂取量が3200ミリグラムという調査でも、対象者の80%以上が摂取過多
であることが明らかになったとしている。
12月1日付
『CSPネット』(コンビニエンスストアや燃料関連の商業紙)によれば、今
回の表示義務には、単体のメニューのみならず、セットメニューが一日の推奨される
食塩摂取限度量を超える場合も含まれ、レストランはその旨を客に告知する必要があ
るという。例えばハンバーガーだけでは摂取限度を超えていなくても、ポテトを加え
ると限度量を超える場合などが挙げられる。
これには、レストラン業界はもとより、食塩製造業者からも「やりすぎ」との声が上
がっているという。前出のレストラン協会からも「このような義務付けは、我々に大
変な負担を課すものである。また、チェーン店といっても、小規模のフランチャイズ
チェーンも存在し、それらの店舗の経済的負担は大きい。法的手段に訴えることも検
討している」とのコメントが寄せられたという。ただ、ニューヨーク州保険局は「今
回のような措置をとらざるを得ない十分な論拠もあり、外食産業への負担よりも市民
の健康を優先すべきと考えている」と述べたという。
ただ、今回の措置に対して全ての外食産業関係者が反対の意を表明しているわけでは
なく、一部のレストランでは早くもホームページなどで表示の改訂を告知する動きも
あるという。また、ニューヨーク州のみならず、全米のチェーン店で塩分量を表示す
る会社もあるという。ニューヨーク市内の外食産業の売り上げのうち、3分の1が今回
の規制が当てはまるチェーン店によるものだという。規制に違反した場合罰金が科さ
れるが、施行から表示まで90日の猶予期間が設けられているという。
アメリカよりも塩分に敏感な日本でも今回のような措置がとられれば、昔から塩分を
取りすぎていると指摘されてきた日本人の健康増進にも一役買うのではないだろう
か。
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