オランダでテロ計画の容疑者が逮捕される(2016/03/29)
フランスでのテロを計画していたとして、オランダの国内でフランス国籍の容疑者ら
が逮捕された。ブリュッセルでのテロからまだ日も浅い中、ヨーロッパでは次はどこ
の国がターゲットになるか、容疑者は隣人かもしれないという恐怖にさいなまれてい
る。ベルギー世論はテロへの驚愕、狼狽からISへの怒り、さらには事件を未然に防ぐ
ことができなかった政府への怒りへと変化している。各メディアは以下のように報じ
ている。
3月27日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』(米)は32歳のフランス国籍の容疑者を含
む4人が、オランダのロッテルダムで逮捕されたことを報じている。年齢は43歳、47
歳、もう一人は不明ということだ。今回の逮捕はフランス警察から依頼を受けたオラ
ンダ警察が行ったもので、これらの者の身柄はすぐにフランスに移されるという。
同日付
『インディペンデント』(英)も同様の内容の報道をしており、拘束された者
のうち一人はアルジェリア系であることが分かっていると報じる。...
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3月27日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』(米)は32歳のフランス国籍の容疑者を含
む4人が、オランダのロッテルダムで逮捕されたことを報じている。年齢は43歳、47
歳、もう一人は不明ということだ。今回の逮捕はフランス警察から依頼を受けたオラ
ンダ警察が行ったもので、これらの者の身柄はすぐにフランスに移されるという。
同日付
『インディペンデント』(英)も同様の内容の報道をしており、拘束された者
のうち一人はアルジェリア系であることが分かっていると報じる。
3月28日付
『CNN』(米)は逮捕された容疑者らはフランスへのテロを計画していたと
報じる。これらの者は先週逮捕されたクリケット容疑者(34歳)の関係者の疑いがあ
るとして逮捕されたが、クリケット容疑者が借りていたアパートの一室からはライフ
ル銃や2キロの過酸化アセトン(高性能爆弾の材料となりうる物質)、その他爆薬の
材料とみられる物質が押収されている。クリケット容疑者の逮捕時、テロの計画はか
なりの程度で進行していたことが分かっている。
フランスは今年に入ってからテロ容疑者として75人を逮捕している。また、その関連
で37人の事情聴取と28人の投獄を行っている。
同日付
『CBS』(米)は今回の逮捕により、ヨーロッパはテロに対して「最厳戒態
勢」に入っていると報じる。まだ明確な関連性や証拠は見つかっていないものの、フ
ランスでのテロ計画容疑者がオランダに移動できたということも、オランダのみなら
ずヨーロッパ全体を警戒させているといえる。
同記事はイタリア警察が、ブリュッセルのテロ事件で指名手配されていたアルジェリ
ア系のウアリ容疑者の身柄を拘束したことも併せて報じている。ウアリ容疑者の身柄
拘束の直接の理由は身分証偽造であるが、このことからもテロ容疑者はヨーロッパ全
体を自由に行き来していることがうかがえる。
さらに同記事はベルギー国内が反テロに揺れ、混乱していると報じる。ブリュッセル
ではアンチISを叫ぶ暴動が起き、暴動に対して警察が放水する騒ぎが起きている。暴
徒の一部はナチズムのスローガンを掲げていたとされる。また、昨年のパリのテロの
後にも見られたように、民意は急激に極右の方向に傾いていっている。ベルギーの政
党「フラームス・ベランフ」は事件以降フェイスブックでの人気が急激に伸びている
(「いいね」が3000%以上の伸び)。他方、ベルギー国内では司法当局や警察、内務
省は非難の的になっている。内務大臣であるジャンボン氏は数十年間にわたる政府の
怠慢が今回の事件を招いたとして辞意を表明したものの、首相に慰留されている。ベ
ルギーはここ2年で6億7000万ドル(約761億円)を投じて警備体制の強化を図ってき
たものの、未だに整備の遅れが指摘されている。
ベルギー警察はパリのテロ事件のアブデスラム容疑者がベルギー国内に潜伏している
可能性を把握しつつもブリュッセルでのテロの4日前まで逮捕できなかったことや、
ブリュッセルでのテロに対する初動の遅れについて世論の非難を浴びている。トルコ
は2015年にバクラウィ容疑者らが自爆テロを起こす可能性が非常に高いとベルギーと
オランダに伝えていたことが明らかにされ、その情報が活かしきれていなかったこと
も世論の非難を浴びる一因となっている。
テロとの長い闘いはまだまだ終わりそうにない。
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英国議会、トランプ氏の入国禁止を審議へ(2016/01/07)
先月2日カリフォルニア州でイスラム教徒らが起こした銃乱射事件を受けて、大統領候補であるトランプ氏が、米国へのイスラム教徒の入国を禁止すべきと発言した。これに対しイギリス国内では同氏の英国への入国を禁止すべきとの嘆願がなされている。この嘆願の審議が今月18日に英国議会で行われようとしている。
1月6日付
『ヴァイス・ニュース』(米)はトランプ氏の入国禁止を訴えるイギリス国民の嘆願が56万を超えたとして、18日に審議が開始されると報じている。英国では1万を超える嘆願には議会は何らかの対応をする義務が、さらに嘆願が10万を超える場合には議会で審理を行う義務があるという。これまでイギリスでは、ボクサーだったマイク・タイソンなど、数々の有名人が不適切な発言により入国禁止にされてきた。今回よりはるかに少ない16万の嘆願でも入国禁止になったケースもあるという。...
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1月6日付
『ヴァイス・ニュース』(米)はトランプ氏の入国禁止を訴えるイギリス国民の嘆願が56万を超えたとして、18日に審議が開始されると報じている。英国では1万を超える嘆願には議会は何らかの対応をする義務が、さらに嘆願が10万を超える場合には議会で審理を行う義務があるという。これまでイギリスでは、ボクサーだったマイク・タイソンなど、数々の有名人が不適切な発言により入国禁止にされてきた。今回よりはるかに少ない16万の嘆願でも入国禁止になったケースもあるという。
もっとも、今回の審議では投票は行われないという。
1月5日付
『ヴォイス・オブ・アメリカ』(米)も今回の審議では投票は行われないし、審議の結果に法的拘束力は無いと伝えている。
トランプ氏の発言に対し、イギリスのキャメロン首相は「人々の不和を招き、有益でなく、まったくもって不適切」とコメントしているが、オズボーン財務大臣は「トランプ氏を入国禁止にすることが最善の策とは思えない」と発言しているという。
また、同氏は英国内で56万を超える嘆願が集まったのは事実だが、それに反対する嘆願が4万を超えることも忘れてはならないとする。
1月6日付
『フォックス・ニュース』(米)は今回の騒動に対するトランプ氏側の反応を載せている。トランプ氏の所有する不動産会社からは「もしトランプ氏が入国禁止になれば、悪しき前例になり、イギリスが言論の自由を抑圧していることになる」とのコメントが発表されている。
また、同氏側は入国禁止となれば、同氏の熱心な支持者にも少なからぬ影響が及ぶとする。同氏はスコットランドにゴルフ場を所有し、昨年7月全英女子オープンが開催された折、同氏もイギリスを訪れていた。「入国禁止となれば、この先ゴルフ場への投資も打ち切りにせざるを得ないし、イギリス国内での他の投資も再考しなければならない」。
ヘイト・スピーチと言論の自由のせめぎ合いである。
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